Pの日記

ただのにっき

さくら公園

いつも自転車でバイト先まで通っているのだが、
途中に公園がある。
なんてことない普通の公園だ、大きさは野球場が二つ分くらいだろうか。
日曜には少年野球が試合をしている。
夜には電灯がともっていて、散歩途中に休憩している人がいたりする。
きちんとした名前はあるのだろうが、俺はこの公園に
「さくら公園」という名前をつけた。
もちろん桜の木が植えてあるからだ、単純。

ある春の日の夜、その公園の横を通った時に俺ははっとした。
桜があまりにも見事だったからだ、しかも公園には誰もいない。
まるで俺が来るのを待っていたかのようにライトアップされている。
俺は自転車を止めてしばらくその桜を眺めた。
ふと、坂口安吾の「桜の森の満開の下」を思い出す。
この木の下には死体が埋まっているのではないか?
桜の美しさとそんな想像でぞくぞくしながら、少し怖くなって
また自転車に乗った。
その公園を夜に通り過ぎるたびに、そんな事を思い出す。

今日はその公園で親子が花火をしていた。
確かにもうそんな季節なのだが、少し肌寒くてすごく違和感を感じた。
しかも公園にはその親子しかいないのである。
俺はそんな風景を、まるでテレビでも見るかのように客観的に観察していた。
この公園は俺の生活圏内じゃない。
ひとんちだ。
桜もそうだ。

血が通ってない。
そんな不思議な公園なので、俺はいまだに一歩も足を踏み入れられないのだった。
つづく。